ダウンロード器用な痛み Amazon アンドリュー・ミラー (著) 00024812

器用な痛み


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3.5 stars of 5 from 5 Readers

ダウンロード器用な痛み Amazon アンドリュー・ミラー (著) 00024812 - 科学と迷信の混在した十八世紀英国を舞台に、生まれながらに痛みの感覚をもたない天才外科医の数奇な運命を描く。IMPAC文学賞、ジェイムズ・テイト記念賞などの文学賞受賞作。【「TRC MARC」の商品解説】

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Details of 器用な痛み

Book's Title器用な痛み
Authorアンドリュー・ミラー (著)
ISBN-104-560-04692-1
Category小説・文学の通販
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Customer's Rating3.5 stars of 5 from 5 Readers
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人間にとっての「痛み」の意味を問い直すことを求める作品 **  哲学者の中村雄二郎氏は、「病い」について述べた著作で、「痛みをむやみに殺すことで人々は貧しくなる自己の生を無感情に眺めるだけになったのではなかろうか」(『術語集』岩波新書)と論じている。また、同書では、「私たち人間が受動的、受苦的存在であることによって、他者や自然とのいきいきとした交流をもちうる」とも言っている。つまり、否定的に捉えられがちな「痛み」が、人間の生を充実させる上で、重要な意味があるということである。 さて、この作品の主人公のダイア医師は、生まれながらにして、痛みを感じることなく、患者に対して仮借なく治療を施すことができるため、名医の名を欲しいままにすることとなるが、同時に非人間的という非難を受けて、周囲から孤立していくことになる。しかし、ある時、痛みを「取り戻す」ことにより、全き人間性を取り戻すことになるのである。まさに、先の中村氏の指摘をそのまま具現化しているような人物であり、この作品自体が、一方的に「痛み」を除去することに邁進する「近代の知」が止揚される過程の比喩であるということだ。 なお、この作品の第1部は、あえて伏線として「謎」を散りばめようという作者の意図が空回りしており、僕にはすごく読みにくかった。勿論、第2部以降はスピード感のある筆致になるので、挫折しないで、読み進めてみてください。
時は18世紀−−「痛み」を感じないという特異な体質ゆえ、見世物となり、ブラック・ジャックはだしの天才外科医となった男性の波瀾の運命を描いた物語。オペラの大作のような濃い味わいの傑作。 **  「痛み」というものは、極めてパーソナルな感覚で他人には分からない。 たとえばお産。私の場合、破水ということがあって、そのお蔭で気の短い性格にふさわしくスピード出産できたのだが、通常の出産より激しい痛みが伴ったようだ。確かにのたうち回った。でも、「通常より激しい」という物言いの何と曖昧なこと。痛みに耐えられ得る能力は人によって違うし、痛みを相対的に測る尺度は今の科学技術は持たない。他人に伝えようがない。 解剖学や薬学など医療技術が一定の水準に達していたものの、迷信や呪いがまだまだ人びとの生活を大きく左右していた18世紀の英国。体に「痛み」を感じないという男がいた。 物語の始まりとして、これはすごくそそられる魅力的な設定なのだけれど、この設定に辿り着くまでには、最初の数十ページ、少なからず辛抱を強いられる。 田舎の小さな村にある牧師の家に居候して哀れな死を遂げた男が、どうやら特異な体質をしていたらしく解剖されるというシーンで始まり、実は外科医だったというその男が、それより1年前には簡単な外科の処術に失敗したことが語られる。このあたりは、作者に気を持たされている印象。おとぎ話のように冒頭ですんなり設定を説明してくれるのではなく、地図も磁石もないのに、パッと手を離されてどこかの谷に放られたような感じで居心地が悪い。読みにくい気がする。 続いて時間が巻き戻され、男の暗い出生と少年時代が明らかにされていくことで、髪の毛を引っ張られて引き摺られていくような小説体験が始まっていく。 見ず知らずの男に犯されて孕まれた子、不義の子に対する村人の冷淡、家族が手に入れた太陽系儀、ずっと言葉を発しないその子が木から落ちて体の「痛み」を感じないとともに心の「痛み」も持たないと発見される経緯、天然痘の猛威に襲われた村などが語られる。 少年が生まれ故郷を去って旅に生きなければならなくなる次第を読んでいるうち、遅れてきた感情移入が、自分のなかで大きくふくらんでいくのを実感する。 ここで、少年の行く末を全部紹介してしまうのはやりすぎというものだけれど、旅は、うらぶれた見世物興行のみじめさから、従軍の船旅、女帝エカテリーナ統治下のロシアへの名誉をかけたものへと彼の人生をランクアップしていく。そして、ロシアへの旅の途次、男は彼の体質に変化をもたらす魔女と呼ばれる女性に出会う。 ビルティングスロマンもありの見事な悪漢小説という評価ができるだろう。けれどそれよりも、深読みのできないファンタジーが多く出てくるなかで、科学技術と超常的なものでせめぎ合う18世紀の社会の雰囲気をたっぷりと堪能させてくれながら、人間の感覚や運命の不思議を考えさせてくれる意欲的で重厚なこの物語を流れるファンタジー味に、私は強く心惹かれた。 カスパー・ハウザーの伝説のように美しい映画でも作られないものだろうか。絢爛豪華な映像がてぎると思うのだけれど…。